ゲンジボタル

夏の夜に明滅する神秘的なホタルの光は、日本人の心の原風景の一つです。箱根には、ゲンジボタルが広く分布していますが、水田に多いヘイケボタルは仙石原の一部に生息しているだけです。他に陸にすむホタルで、小さいけれど短く強い光を放つヒメボタルが森林内に生息しています。

ゲンジボタルは体長12~16mmで、雌の方が大柄です。早川や須雲川とその支流に生息し、芦ノ湖の湖岸にも生息地があります。湖にゲンジボタルが生息することは大変珍しいことですが、生息地には湧き水があり、波による水の動きも加わって、幼虫の生息環境を満たしているようです。

ゲンジボタルの幼虫も餌となるカワニナも、急な流れに適応した体型ではなく、豪雨によって激流となる早川や須雲川の本流は、あまり住み心地の良い環境ではありません。安定した生息地は、水源が湧き水で、自然が残された細い流れです。こうした場所は水量が安定し、カワニナの繁殖も順調です。

昔に比べると発生地は少なくなりましたが、初夏の湯本に始まり、大平台、宮城野、小涌谷、仙石原へと発生が続き、標高の高い所では7月中旬まで見られます。

ホタルやカジカガエル、野鳥を始めとする箱根の生き物たちは、箱根を訪れた人の心に安らぎと感動を与える観光資源でもあり、古くから箱根の人と共に生きてきたふるさとの仲間でもあります。これからも人との共生が続くよう見守って行きましょう。

※「箱根生きもの図鑑」は、今回をもって連載を終了します。長い間ご愛読いただきありがとうございました。

 

ふるさとの仲間たち 箱根生きもの図鑑

お問い合わせ先