アズマヒキガエル

生暖かい南風が吹く濃霧の夜、冬の眠りから目覚めたばかりの水辺は、クックックッ……という無数の鳴き声と、ガサガサと枯れ草を踏み鳴らすたくさんのヒキガエルの姿で異様な光景になります。周辺の道路にも、産卵場に向かうヒキガエルの姿が見られ、中には雌に抱きついている気の早い雄もいます。名前はアズマヒキガエルで、筑波山の四六のガマと同じ種類です。

水中では、雌の脇の下をしっかり抱きしめたペアがいる一方、雌に次々に飛びつき、ライバルをけ飛ばし合っています。産卵場での雌の数は雄の数分の1と少なく、雌をめぐる雄たちの争いが俗に言う蛙合戦なのです。

雄は手当り次第に飛びつくので、大部分は雄に抱きつくことになりますが、雄は脇の下を触られるとクックックッと鳴くようになっています。そこで相手が雄だと気付いて離れるのです。

騒ぎは通常2~3日で終わり、水溜りの底は1.6~2.6mのひも状の卵のうでおおわれます。1匹の雌が産む卵のうは2本で、中には3千2百~4千2百個の卵が入っています。

蛙合戦は芦ノ湖の湖尻水門付近では、春の冷え込みや降雪により大幅に遅れた年を除くと、80年代は4月10日前後に始まっていましたが、90年代後半からは4月上旬に始まっています。おととしは4月1日に始まり、今年あたりは3月末に始まるかも知れません。地球温暖化の影響は箱根のカエルにも及んでいるのです。

なお、箱根山地では赤い模様の出る個体もいて、時には写真のような鮮やかな個体も見られます。

ふるさとの仲間たち 箱根生きもの図鑑

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