カジカガエル

若葉の頃、湯本を流れる須雲川や早川を歩くと、瀬音に混じってフィーヨ・フィーヨ・フィフィフィ‥‥という鳴き声が聞こえてきます。カエルらしからぬ美声のせいか、観光客が立ち止まって、鳥の声だ、いや虫の声だ。などと言い合っていることもあります。また、美声のことは知っていても姿を見た人は少なく、魚のカジカを見て、これがあんなきれいな声で鳴くのかと感心している人もいます。

両方が同じ場所で見られることも多くて混同されやすいのですが、カジカガエルの方は河鹿と書くのに対し、魚の方は鰍と書き、こちらは美味で知られています。

カジカガエルの成体は、雌が体長5~7cmであるのに対し、雄では体長4cm前後しかありません。これは、雌が雄を背負って流れを移動したり、石の下のすきまで産卵する時に、雄が小さい方が都合が良いためとされています。

ところで、美しい声で鳴くのは小柄な雄の方です。雄は、水中から出た石の上を縄張りにし、鳴きながら雌を待ちます。雌は産卵を終えると数日で流れからいなくなりますが、雄は3か月ほど石の上での生活を続けます。このため、美しい声を長く楽しむことができるのです。

なお、鳴き声は夜の方が盛んで、ゲンジボタルの発生と重なる時期には、光と音の共演に出合うこともあります。

ふるさとの仲間たち 箱根生きもの図鑑

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