ガビチョウ

最近、耳慣れない大らかな節回しの鳥の声を聞いた人がいると思います。夏鳥のクロツグミに似ていますが、高い声を出さず、秋や冬も鳴いています。声の主は、本来日本には分布しないチメドリ科のガビチョウです。飼い鳥として輸入された鳥で、原産地は中国南部や東南アジアです。

大きさはヒヨドリより小さく、翼も短く、足と尾羽根が長めで、くちばしは黄色です。目の回りの白い模様が特徴で、まるで京劇の役者の隈取りのようです。

生息環境は、伐採跡地の茂みや畑周辺の林、二次林の下層など人の手が入った場所です。翼が短いせいか、込み合った枝の中で器用に活動し、密生したヨモギや、地面をおおうフキの中で採餌していたこともあります。

ガビチョウは、1990年代初めから、神奈川県北部の相模湖周辺を中心に分布を拡大しているそうです。箱根では99年に芦ノ湖近くに数羽の群れが出現して以来目撃例が増え、繁殖も始めたらしく、2002年には芦ノ湖周辺の公園や仙石原でも頻繁に記録されるようになりました。足柄平野周辺の兵陵地でも目立つ存在となっており、伊豆半島側へも入っています。

急激な分布の拡大と共に、生息個体数がどの程度まで増えるのか気がかりです。たとえ日本の鳥が利用しなかった餌を食べているとしても、有限の世界に新たな鳥が増えるのですから、餌となる昆虫をはじめ、どこかに影響が出るはずです。ソウシチョウのように、自然度の高いブナ帯の森林に侵入することはありませんが、注目のニューフェイスです。

ふるさとの仲間たち 箱根生きもの図鑑

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