ヒナコウモリ

箱根では、4月上旬から5月中旬にかけてと、10月下旬から11月中旬にかけて、チュン・チュン……あるいはチン・チン……というコウモリの声が聞こえてくることがあります。
普通、コウモリは障害物や餌となる昆虫を、人の耳には聞こえない超音波を発射して反射音で見分けています。ですから、人間の耳に聞こえる20キロヘルツ以下で鳴くのは、とても不思議なことなのです。

夜空から降ってくる謎の声は、超音波を人間の耳に聞こえるように変換するバット・ディテクターで聞くと、推定18キロヘルツでピュッ・ピュッ…と聞こえます。同じ旋律をくり返して旋回していることが多く、仲間を呼ぶディスプレイソングではないかと思われます。

さて、この謎の声の正体は、山北町の丹沢湖そばの越冬集団の観察から、ヒナコウモリであることがコウモリの会の山口喜盛さんの研究でわかってきました。

ヒナコウモリの大きさは、翼を広げると約32cmで体重は20gほど、背中の毛には白い刺し毛が混じっています。

箱根のヒナコウモリは、春と秋に観察され、二ノ平では、30~40頭が観察されています。ヒナコウモリは、繁殖場所と越冬場所との間で渡りをすることが知られており、箱根へは渡りの途中に立ち寄っているものと思われます。

小田原駅近くでは、12月に広範囲でこのコウモリの声が多数聞こえることがあり、どこかで越冬しているか、集団で移動中なのかも知れません。

ふるさとの仲間たち 箱根生きもの図鑑

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