箱根(はこね)生(い)きもの図鑑(ずかん) (28)アケビコノハ
晩秋から初冬にかけて、木の葉そっくりのガがいたと話題になることがあります。このガは、成虫で越冬するアケビコノハです。上の羽根は枯れ葉そっくりで、頭の上の突起は木の葉の柄に似せているという念の入れようで、枯れ葉にまぎれていれば外敵に発見されることは、まずないでしょう。
ところが、下に隠れた羽根は、鮮やかな黄色地に黒の目玉模様です。系統的に近いシタバガの仲間も上の羽根は樹皮そっくりですが、下の羽根は赤や黄色の派手な色をしています。彼らは、保護色を見破られると羽根を開き、派手な下の羽根を見せて敵をおどし、相手がびっくりしたすきに逃げるそうです。アケビコノハも「忍法木の葉隠れ」がばれたら、目玉模様でおどかして生きのびてきたのでしょう。
幼虫はアケビやムベの葉を食べますが、背中に目玉模様を持ち、危険を感じると頭を隠して尻を頭に見せかけます。虫を食べている小鳥も、目玉模様にどっきりするでしょう。
ところで擬態昆虫は、自分の姿を見ることができません。不思議な姿は、天敵である小鳥が造ったと言われています。つまり、似ていないものは食べられ、似たものが生き残り、小鳥はさらに見破る能力を高めて‥‥というくり返しで今の姿になったのです。生き物はそれぞれ長い歴史を背負っていると言えます。
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更新日:2016年3月29日