箱根(はこね)生(い)きもの図鑑(ずかん) (10)タコガエル
箱根山地でヤマアカガエルに次いで産卵が早いのがタゴガエルです。標高700m付近での繁殖行動は3月中旬で、標高が高い所では3月末に行われる所もあります。
タゴガエルは体長4~5センチメートルの小型のアカガエル類で、ヤマアカガエルの子供とは、足が短いことや、のどから胸にかけて小さな点が密集した茶色の模様があることで識別できます。箱根の標高500m以上の場所ではよく見るカエルですが、その卵を見た人は少ないと思います。
タゴガエルの産卵場は、池や水たまりではなく、沢や湿原にある小さなわき水です。しかも石の下や土の穴に潜って産卵するのです。雄は産卵場で、グー…グー…とこもった声で鳴いて雌を誘いますが、鳴き声で見当をつけて探してもなかなか発見できません。雌を待つ雄の体は、水中での皮膚呼吸を助けるためか、皮膚がたるんでぶよぶよしています。
卵はカエルにしては大きく、直径3mmくらいあります。卵を包むゼリー層は小さくて、しっかりとした卵塊です。幼生は、飼育すると餌を食べますが、餌を食べなくても、卵の養分だけで体長6mmほどの子ガエルになります。わき水の産卵場は安全ですが、食べ物に乏しいため、栄養たっぷりの大きな卵が必要なのです。
池や沼地で繁殖するカエルの数は昔に比べると激減しましたが、タゴガエルの数は、特殊な繁殖方法のせいか減少せず、箱根山地の生態系の重要な一因となっています。
お問い合わせ先
更新日:2016年3月29日